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  • 2009.08.12 Wednesday
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鳥の巣

JUGEMテーマ:小説/詩


最近、朝鳥の鳴き声がうるさい。
そう思ってるだけだったが、洗濯物を干していてふと見上げて気づいた。
なんだ、鳥の巣か。
どうやら気づかぬうちに巣作りしていたらしい。
多分、まだ雛は孵ってないのだろう。
正直朝の弱い俺からすればいい迷惑だが、かといってこれをどうにかしてしまうのも忍びない。

ということをダチと飲んでる時に言ったら、
「お前が鳥の巣壊せねぇってガラかよ! ぶははははは」
と笑われた。
全くもって傷ついた。とりあえずその時吸ってたたばこをそいつの腕に押しつけてやった。
同時に足も思いっきり踏んでやった。俺が履いてる靴はただの靴じゃない。ちょっと荒れた道でもモノともしない半登山用の根性の入った奴である。
「ほおおおおおおおおっ!!」
全く、うるさいやつだ。
「おま……骨……折れる…」
「知らん」
さて、どうしたものか


毎朝うるさいが、心優しい俺は暖かく見守っている。
起きた瞬間はこの野郎唐揚げにしてやろうかと思ったりもするが我慢だ。
卵も茹でたらきっとうまいだろうけど、それも我慢だ。
俺の家のべらんだの軒先で新たな命が生まれようとしているのに、そんな一時のイライラで摘み取ってしまうわけにはいかない。
そうだ、落ち着け俺。
深呼吸だ。
すーはー
……その時、猫が隣のベランダからよじ上がってくるのが見えた。
目線はもちろん、鳥の巣。
「くおおおおおおおらあああああああああああああああああ!!!!」
思わず馬鹿でかい声が出た。
目んたま飛び出そうなぐらい出た。
深呼吸なんぞしちまったのがいけなかったらしい。
びくっどころが、銃声でも聞いたかのように、めちゃくちゃ慌てて逃げていく猫。
ふふーん。ざまぁみろ
この俺の領地を脅かそうとするからだ。
と、足下にぽとっと音がした。
鳥の糞? いや……
音に当てられて、バランスを崩した親鳥だった。


そんなトラブルもあったものの、鳥はやはり今日も卵を温めているようだ。
雨が降ってきたので、ちょっと様子を見に行く。
……実はこいつが来てからベランダでたばこも吸ってない。
確かに俺にしては変に愛着がわいてるような気がする。
悪いか。いいだろ、別に。なにも変じゃないぞ。
誰も聞いてないのに言い訳してしまう俺。
雨の音を聞きながら、鳥の巣を眺めること数分。
ふと、雨の音に紛れて小さな音が聞こえてきた。
こつ、こつ。
俺はびびって後ずさってしまった。
おい、まさか。
こつ、こつ。
孵ろうとしてるのか?
こつ、こつ。
こんな雨の日じゃなくてもいいのに。
思わず唾を飲み込む。
よくわからんが、緊張してきた。
まさかそんな瞬間に立ち会えるとは…。
こつ、こつ。
じっと見つめる。下からじゃ巣の中は見えないけど、きっと今卵は一生懸命孵ろうとしているはずだ。
しばらくして。
雨の音にかすれるように、聞こえた。
ぴ。ぴぃ。
かすかな、雛の鳴き声。
思わず俺は部屋の中に駆けだした。
携帯電話を手に取って、すぐさま電話をかける。

「あー、もしもし。なんだ?」
「雛が生まれたんだよ!!」
「は?」
「だから、この前話してた鳥の巣の」
「あ? なんだっけ?」
「お前いっぺん死んでこい」
切った。

次。
「もしもし?」
「おー久しぶり」
実はさー、鳥の巣が軒先にできて、雛が生まれたんだよー!
という内容を熱弁してみた。
「あーそうなんだ。おめでと」
反応薄っ!!


しまった。
感動を共感できる友達が居ない。
なんて惨めな奴なんだ俺は。
なんか居ても立っても居られなくて、ピザ屋に電話した。
「はい。○△ピザです」
「えっと3番のピザ、Mサイズ。超特急で。住所は…」
「はい、わかりました。30分以内にお届けしますので、代金の用意をしてお待ちください」
ち。30分以内じゃない、超特急だよ超特急。
落ち着かないまま貧乏揺すりとかしながら15分待ったところでチャイムが鳴った。
「はい!」
「お待たせいたしました、3番のピザです。代金は……はいちょうどですね。ありがとうございました」
「ちょっと待ったああああ」
「はい?」
「実はですね!! ベランダの軒先に鳥の巣がでたんスよ!! そんでね!」
「あの、すいません。次の配達があるので……」
そういって配達員は逃げた。
使えねぇ。
ダメだ、あそこのピザ屋。もう頼まねぇ。
……まぁ、いいや。ピザ食うか。
久々に食うが、うまいな。やっぱまた頼むか。


数日後。
ぴぃぴぃぴぃぴぃうるさい。
衣つけて揚げてやろうか。若鶏の唐揚げは大好物だぞ、この野郎。
しかし、そんな卑小な自分はダメだ。我慢だ。ああでも、うまいかも知れない。
いやいや、そんなことはいい。
たまに見える雛は、小さくて可愛くておいしそ……いやいや、可愛くて和む。
全く、親鳥よりそそるから困る。
早く育つといいなぁ。巣立ちはいつだろう。


そんなこんなで見守ってたある日。
いつものようにベランダに出て
出ようとしてすぐ窓を閉めた。
落ち着け。
なにがあった俺。
なぜ閉めた。
なぜ戻った。
よし、深呼吸だ。
すーはー
すーはー
よし。
右良し、左良し。
窓開ける。
見る。
羽毛が落ちてた。
赤く汚れた、小さな羽毛が落ちてた。
血で濡れ、もう舞うことのない、小さなものが落ちていた。
俺は窓を閉めた。
目を閉じた。
どうやら俺はショックを受けてるらしい。
なんでだ?
それは……
「嘘、だろ…」
雛は殺されていた。
俺が食ったわけじゃない。何者かに殺されていた。
といっても人間じゃない。
きっと、あの猫だ。


気がつけば外に居た。
なにをどう歩いて来たかわからないが、茂みの中にいた。
そして、視線の先にはその猫が居た。
薄汚れた猫は、前のように逃げ出しもせず、怯えたような目をしつつもこちらを威嚇してた。
お前はなにをした。あの雛になにをした。
俺は一歩踏み出した。
全身の毛を逆立てて、猫が威嚇する。
俺はさらに一歩踏み出した。
猫は後ずさりもせず、怯えてるはずのに、まだ威嚇していた。
もう走ればすぐ捕まえられる距離なのに逃げ出さなかった。
にー
聞こえた。
聞きたくもない鳴き声が聞こえた。
にー、にー
その猫のうしろには、小さな子猫が3匹、隠れていた。
いや、隠れようとしているのだが、必死すぎて隠れられないのだろう。
にー、にー
3匹のうち、1匹は鳴いてなかった。動いてもなかった。
よく見ると、顔は子猫だが、身体がおかしかった。
さらにしばらく見て、それがなにか気づいた。
潰れていたんだ。
俺は、急にいたたまれなくなって、振り向いて、走った。



部屋に戻り、薄暗い室内の電気もつけず、そのまま床に寝転んだ。
なにも思い浮かばない。
真っ白だ。
唐揚げ食いたい。
違う。
猫って焼いたら食えるんだろうか。中国人ならありうるな。
違う。
なんでこんな
自然って残酷なんだろう。
いや、あの潰れた子猫は、自然というより……

……たばこ吸うか。
もう、ベランダで吸っても構わんだろう。
と思って、窓を開けて後悔した。
ああ
そのままだった……な。
埋めてやるか。

ぴ。ぴぃ。
聞こえた鳴き声に俺は全速力で逃げた。部屋の中に逃げて、突っ走って、そのままトイレに逃げ込んだ。
ついでにズボンを降ろしたところで気づく。
なにをやってるんだ俺は。
ベランダに戻る。
窓は当然開けっぱなしで、そこに転がってるのもそのままだった。
だけど、そこから目をそらして巣を見上げた。
ぴ。ぴぃぴぃ。
居る。まだ生きてる。
全部殺したわけじゃなかったのだ。
しまった、たばこを吸えない。
…違った。
喜ぶところだここは。
でも喜ぶ前に、目がうるんで、なんかまた逃げたくなった。
いや、今はやることがある。
埋めてやろう。こいつの兄弟を。


近くの公園に埋めてやった。その場でたばこを1本吸って、吸い殻を墓標代わりに立ててやった。
いつもは一応持ち帰るが、墓標の1つぐらい許されるだろう。
家に帰ったらもう疲れて、そのまま床に転がって寝てしまった。
そして、おいしそうな唐揚げの夢をみた。空飛ぶ唐揚げの。



…どんだけ食い意地張ってるんだ俺は。
起きてから自己嫌悪に一瞬入った。
あ。
慌ててベランダを開けて、見上げた。
暗い。もう夜になってたのか。
音はしない。
でも夜目に慣れてくると、親鳥が居るのがわかった。
なるほど。寝てるのか。
じゃあ寝るか。
さっきまで寝てたが知らん。
こいつが寝てるのに俺が寝てないのはおかしい。
なにせこいつにいつも起こされてるんだ。
俺はもう一度寝た。


今度は、飛び立つ雛の夢を見た。
俺も一緒に飛ぼうとして、崖から落ちた。


目が覚めて苦笑した。
こいつが巣立ちするまで、俺はきっとこんなだろうな、と思って。
外は明け方。コンビニいって、唐揚げでも買ってこよう。

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