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  • 2009.08.12 Wednesday
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また放置かよ>俺

いろいろ終わってる。
なんかいろいろ気持ちの入れ替えしてました、ここ1ヶ月。
だらだらなブログだけど、最低限の更新頻度は保ちたかったな。でもそういう時期もあるもんで仕方ないんだろう。
なんだかんだこの調子で8年ぐらいやってるし

でも定期的に見にきて頂いてる方には申し訳ないです…
書けるようになったらまた頑張ります!

本の精霊

JUGEMテーマ:小説/詩


本を大事にしてね、といつも私は言っている。
前のご主人様はとてもいい加減だった。
その前のご主人様は、やっぱりいい加減だった。
さらに前のご主人様は……よかったかも。
今度のご主人様はとっても大事にしてくれる。
しすぎてくれて、私が怖くなっちゃうみたい。

私は本の精霊。
古い本に宿る、弱い精霊。
本を読んで感じてもらえる、いろんな気持ちが私を作った。
私の宿る本の作者、つまり私のお父様は、もうこの世にいないけど、私はそのお父様の言葉をこの世に伝え続けている。
ほんとは、私は他の本に宿ることもできる。
本の精霊はいろんな本を宿りうつるし、大切にされるのが大好きだから、そんなご主人様を見つけるとそこにずっと居座る。
でも私は、そうしなかった。私は今宿ってる本で生まれて、その本から抜けようと思ったこともない。
私はお父様の言葉が大好きだったから。
何度か他の本の精霊と話したことあるけど、私が「お父様」と呼んでるような人はみんないないみたい。
もう忘れてしまったのかも知れないし、やっぱり最初から居なかったのかも知れない。
彼女たちはみんな、ご主人様が好きで、ご主人様と一緒に過ごして、そしてご主人様がいなくなると寂しそうに消えていったから。
私みたいに、一つの本に宿ったままな子は見たことない。すごく変わり者なんだと思う。


今日も、ご主人様は丁寧に本を扱ってくれている。
「さて、と」
ご主人様は若い。今までで一番若いかも。まだ20代のお兄さん。
でも古い本が大好きで、私の本よりもっと古い本もたくさん持っている。
もちろん、ここにいる精霊も私だけじゃない。本を大切にしてくれるご主人様の元には、たくさんの精霊が寄ってくるから。
「そろそろ手入れもしてやらないとなぁ。週末時間つくるかな」
そう、ご主人様は本の手入れに余念がない。いつもいつもしっかり手入れしてくれる。
それはとっても嬉しいのだけど、なんだか今まで大切に扱われてこなかった私には不思議だし、なんだがむずがゆい。
周りの精霊たちはそれでこそご主人様だと喜んでいるけど、私は複雑な気分だった。
あの子達はいつも、こういうご主人様と一緒にいるんだ。
いつも、ぞんざいな扱いしかされてこなかった私。
いつも、ご主人様に大切にされてきたあの子達。
本を大切にしてね、なんて言わなくてもいい。あの人は当たり前のように大切にしてくれる。

ある日、ご主人様が私の宿る本を取ってくれた。
その本には、ある男爵の生涯について書かれている。
男爵は圧政を敷きとても憎まれていた。だけど、ある日彼の子供が死に、そこから今までにない世界が広がっていく。大人なのに子供じみた、わがままな男爵が、誰よりも聡明で民を愛し、みんなに慕われる男爵に変わっていく。
それなのにある日、昔母親を亡くした青年に男爵は刺される。
……そんなお話を、ご主人様は帰ってきてから夜、何日かかけて読み進めていった。
本に宿る私には、ご主人様の温かい気持ちがわかる。
こんなにも大切にしてくれるご主人様。なのに、本を読んでる時の感情は、今までのどのご主人様より希薄だった。
私はそれが不思議でならなかった。
なんでなんですか、ご主人様。
問いかけても、ご主人様には私の声は届かない。

ご主人様が本を読み終えた。
「この本を書いた人は、何を思ってこの本を書いたのだろう」
独り言を呟くご主人様。その姿が不思議だった。
ご主人様は、本の内容が理解できなかったのだろうか。こんなに本を大切にしているご主人様なのに、私の宿る本はだめなのだろうか。
「僕には想像できない。憎まれていた人間が、そう簡単に許されるなど。そんなきれい事なんて」
私は悲しかった。
こんなにも大切にしてくれるご主人様がそんなことを言うのが悲しくて仕方なかった。
「思ったより微妙だったな。置いといても仕方ないから、やっぱり売ってしまうか」
そして、私はこのご主人様の元を離れることになった。


今度のご主人様は、やっぱりいい加減な人だった。
読んだ後、本をそのまま置いておくし、外から帰ってきて手も洗わずに本を読む。
だから本はやっぱり少し痛むけど、でも私はほっとした。
だってこのご主人様は、しっかりと本を読んでくれるし、感動してくれるから。
前のご主人様はあんなにも優しかったけど、丁寧に扱ってくれたけど、理解して貰うことが出来なかった。
私にはなによりそれが大切だった。
お父様の言葉を伝えるために、私はこの本に宿ったのだから。
少しずつ本が傷んだって、この本を好きで読んでくれる人がいい。
それを他の精霊達は変だって言うかも知れないけど、私にとってはそれが一番だからいい。
だからきっと、本がよれよれになって、私もぼろぼろに崩れても、私はずっとこの本と共にあるだろう。

昔、お父様が伝えたかった思いを伝えるために。
伝わっていくのを、ただ見守るために。

ばたばたどたどた

えーまた最近忙しいです
そんでもって最近また方向性見失い気味です
うがーー

でもまぁ元からぐだぐだなので良しとする。
良くないけど、気にしすぎてなにもしなくなるよりはよかろーと思います。


近況報告以上。
また思いついたらささっと短めの書くと思います。
まとまった量のは……最近書いてないね。いくつか途中までのがあるから、一つぐらい今月中にちゃんと更新したいなぁ。

逃げていたのかも知れない

JUGEMテーマ:小説/詩


逃げていたのかも知れない。
きっと君が手を差し伸べてくれると思って
僕が知らんぷりをしていても
きっと君から来てくれると思って
なんでもないフリをして
逃げていたのかも知れない。


たくさん裏切られた。
そしてたくさん裏切った。
不信じゃないと嘘をついて
本当は誰も信じられなくて
わめくこともできなくて
殻に閉じこもることもできなくて
流されるままに逃げていたのかも知れない。


君の手を掴むのが怖かった。
僕から手を伸ばして、弾かれるのが
どうしても怖かった。
君の手に捕まれるのが怖かった。
自分が裏切ってしまいそうで
君を傷つけてしまいそうで怖かった。


怖くて怖くて逃げていたのかも知れない。
知らんぷりをして、
君から僕の心に入ってきてくれるのを
待っていたのかも知れない。
でも待ってたはずなのに、それすらも怖くなって、
距離を開けて逃げていたのかも知れない。


こんな臆病な僕が
望むことは許されるのでしょうか?

第3話「旅立ちの日?」

勇者:「呼ばれてないから出てました」
僧侶:「おい」
勇者:「そんなもんだろ毎度」
僧侶:「そりゃそうだけど……あんた、少しは呼ばれるようなことしなさいよ」
勇者:「確かにワンパターンにも飽きてきたな。なんか面白そうなことでも探すか」
僧侶:「そういえば魔王倒しに行くんじゃなかった?」
勇者:「そういえばそんな話だったかもしれない」
僧侶:「そもそも魔王ってなんなわけ?」
勇者:「……さぁ?」
僧侶:「なんか偉そうにして、適当にモンスターばらまいてるだけよね」
勇者:「うむ」
僧侶:「わざわざこんなやつ勇者に仕立てて倒しに行かなきゃならないのかしら」
勇者:「お前それは違うぞ」
僧侶:「違う?」
勇者:「俺みたいなやつだから、勇者にして適当に乗せとけば王様はなにも気にせずに過ごせるというわけだ」
僧侶:「なるほど、死んでも困らないものね」
勇者:「…なんかはっきりそう言われると傷つくな」
僧侶:「あんたにそんな繊細な神経はないでしょ。でも、結果みると大失敗よね」
勇者:「あごで使おうったってそうは行くか。せっかくの勇者という称号、使うだけ使い倒してやる」
僧侶:「でもいい加減もうちょっと大きな街いかない? あたしもう飽きたんだけど、ここ」
勇者:「言われてみれば確かに。でもあいつらと別れるのは辛いぜ……」
僧侶:「こら。勇者が別れを惜しんでたらキリがないわよ。てか、そんな相手いたの? この町に」
勇者:「いやー、俺を慕ってくれる友人達がな」
僧侶:「餌付けしたガキ共ね。いい情報源にはなったけど」
勇者:「あと資産家のAさん」
僧侶:「……何回あそこのおうちから頂いたのかしら」
勇者:「一般人は万能鍵なんてものがあること知らないからなー。いやいや、いい儲けにさせてもらいましたよ」
僧侶:「未だにたたき出されてないんだから、勇者って偉大ね……」


魔王より勇者の方がタチが悪いんじゃないだろうか

JUGEMテーマ:小説/詩



臆病亀

JUGEMテーマ:小説/詩


小さな村の、小さな井戸。
村はずれの、みんなが使わなくなった井戸。
村の真ん中の井戸と比べて、
水は汚くて、くみ取りづらくて、
普段はふたをかぶせたままほっとかれている。

そんな井戸のなかに住み着いた
一匹の小さな亀。
なんでそんなところに住み着いちゃったかは忘れたけど、
亀は満足していた。
傾いて穴もあるふたから漏れる陽の光はほどよくて、
水温はいつも心地よい温度で、
なにより怖いモノはなにもいなかった。

その亀も、長く長くそこに住んでいて、
気がついたらもういい歳。
今まで思わなかったのに、
ふと、その井戸の外に出たくなった。

湿気が多くて薄暗い井戸の側面は、コケがびっちり生えていて、
鈍重な亀には登れそうになかった。
それでも亀は登りたかった。
登って、眩しい陽の光を浴びてみたかった。
もう覚えていない、外の賑やかな世界を見たかった。

年老いた亀は決意した。
少しずつ少しずつ壁をのぼった。
滑り落ちて、水に背中をぶつけた。
頑丈な亀も、歳をとった今じゃその衝撃が響いた。
それでも、亀はよじ登った。
どうしても陽の光を浴びたかった。

執念が実を結び、何度も何度もチャレンジした挙げ句、ようやく井戸の外にでられた。
眩しい陽の光に目がくらみ、
亀は大いに喜んだ。
なんでもっと早く井戸から出ようと思わなかったのだろう。
なんでこの陽の光を忘れてしまっていたのだろう。
こんなにぽかぽかと暖かくて、嬉しくなれるのに。

その時、大きな鳴き声が聞こえた。
亀は大慌てで甲羅のなかに閉じこもった。
がくがく震えて、逃げ出したいけど動けなくて、息苦しくなった。
ああそうだ。
怖かったんだ。
怖くて甲羅に閉じこもるように、怖いモノのない、井戸の中に逃げ込んだんだ。
なんてもったいない人生だったんだろう。
なんて臆病な自分だったんだろう。

大きな鳴き声をだした生き物は、のしのしと去っていった。
年老いた亀は、もうそこから少しだって動きたくなくなった。
だけど、井戸を出た世界は広すぎて、こんな近くにずっと居るなんて勿体なかった。
年老いた亀は歩いた。
陽の光の中、歩くとめまいがした。
もう、ふらふらだ。

甲羅が重くて、重くて、
脱げるものなら脱いでしまいたくなった。
そんな風に考えるのも不思議で、
臆病だった自分はどこに消えたのだろうと思った。
年老いた亀は、ただ歩いて、歩いて、気がつけば水のあるところにいた。
それは大きな水たまりだった。
けれど、数日もしたらこの光に干されてしまうのだろう。

亀にとってはその数日だけでも十分だった。
だってもう、亀は動けなかったから。
だってもう、亀は自分の終わりを知っていたから。
最後に水に浸かって、亀は陽の光を浴びて、
ささやかな幸せを感じていた。

ああ、生まれ変わったら。
もっともっと、もっともっと
遠くまで、どこまでも、
この広い世界を行きたい。
その時は、きっと怖いものからも逃げず、
行きたいところまで、どこまでも歩いていける。

だから、亀はただ願った。
臆病でなく、どこまでも、進める自分に生まれ変わることを。
そして、亀の命は、陽の光に溶かされていった。

自分のカタチ

なにかを書きたい気分だけど、小説書く気力がわかないよーな感じなので、雑文でも。
書き出したら愚痴になるかもしれないけど、まぁ適当に流してやってくださいな。


もっと生き生きと生きたいなー、と生を連続で並べてみましたが、とにかく足りません。
目指すところ? やりがい?
なんかそういうもの。
大まかにはあるよ。ここで小説書いてるのもそーだしね。

小説書くのは惰性で、意味なんかないという気分の時期も長かったな。
今はそんなことない。書いて表現するのが好きだし、やっぱり人に読んで貰って、いろいろ感じて貰うのが嬉しい。より多くの人に読んで貰いたいし、よりいろんな気持ちを与えられるようなものが書きたい。
でも、それをどれだけやろう、とか今ないなぁ。
大きい目標立ててがんばろーっ!!  てやりたい気もするけど。
うーん。
なんか、突っ走ることにブレーキ踏んでる自分が居る。

もう一つはお仕事のことも同じ感じ。
というか、俺はソフト屋さんじゃんか。
ソフト屋、というかエンジニアというものは自分の技術が売り物であって、磨くべき道具であって、誇りであるべきなんだ。その点、自分だって感じちゃいる。
いるけどさー……
これも突っ走れない。理由はなにか?
………なんか、ここに全力投球する自分には違和感を感じる。
それに逆らう自分が居る。ブレーキというか、アクセルを踏む気にもならないけど、踏まなきゃならないな、踏んで行かないとな、という気持ちはあるけど、積極的とまでは言えない感じ。


望んでいること、ね。
自分の本心って読みにくいけど、なんとなくの理想型は思い浮かべられないことないよ。
俺はソフト屋を「食っていくための仕事」として選んだんだ。
だけど、それがライフワークだとは思っていない。
だから、それを自分の中心に置きたくない。そういう頑固な意地がある。
なんでかって言われたら、俺が自分をなんと名乗りたいか、ってことなんじゃないかな。あくまで俺は「物書き」で居たいんだ。全く、ちっとも、物書きとして動けてないのにね。
逃げて逃げて逃げ続けて。
そういうところ、自分は昔から変わってない。
それを仕方ないと、どうしようもないと、ただ言い訳して、情けなく逃げ続けているだけ。
本気じゃない。本気だと願いたいけど、本気なわけがない。
自分と戦っていない。口先だけ、そうありたいと言ってるだけ。
ふざけてる。そんな逃避が望みか。


打開したいけど、逃げ続けている。
求めているのは感情。
今の俺には足りなさすぎる。有り余るのは、自分自身に対してネガティブな感情だけ。
それに溺れてしまうことのないようにするだけで、正直それ以上どうこうできそうにない状態が続いている。
そんなの無視してすっ飛ばして、ガンガン突き進みたいけど、そんな便利にできてないようだ。
ない。なさ過ぎる。自分の行動に結びつく感情が。
自分がどこまでも行きたいと思う、いい気持ちも。
ふざけんなと、壁をぶち破ってでも突き進む、怒りの感情も。
どっちもない。
あるのはただ、どうにもこうにも面倒な感情だけ。身体を縛り付けようとする、重みばっかり。
そんな気持ちにならなきゃならない理由は、もうほとんど持ち合わせちゃいないはずなんだが。

ただ幸い、脳天気になるだけの余力は残ってる。問題なく身体も心も、ほどほどに元気だ。
ある意味、それだけで十分かもしれない。人間なんて大体そんなもんかもしれない。
でも足りないと俺は思う。
越えたいと俺は思う。





そういう意味では、俺は本当に自分が一番欲しているものを理解している。
そして簡単に手に入らないこともよくわかっている。

ただ孤独な、夜

JUGEMテーマ:小説/詩


遠くて…寂しくて。
手に入らなくて、重くて、悲しくて。
胸の上に手を置いて、ただ感情に押し流されるまま
痛みが消えず、苦しい気持ちだけは、次々と溢れるのに
なぜ泣けないんだろう。

どこにもない。
本当に欲しいものだったはずなのに、
それは心から消えてしまった
どんな形かも思い出せない
大切だったあの気持ち
ただ取り残されたように、
胸の痛みだけが熱を持つ

思わず伸ばした手は
なにもつかめない。
温かみはつかめない。
それ以上動けなくなって、
ただ震えて耐える


流れ出てくる言葉は
意味のないただの単語
なのに、
浮かぶたび胸が締め付けられる。

好き
スキ
大好き
ダイスキ
過去の誰かに宛てた、ただの言葉
行き先がないのに
次々と出てくる

口を開いても言葉はでない
息もうまくできない
ここから逃げ出したいと
身体に力を入れるのに
ちっとも言うことを聞いてくれない

ただ止まらない痛みが
自分を責め立てる
いつか終わるはずと思っても
辛くて耐えれなくなり
誰かに助けを求めたくなる

お願い
必要だと言って
欲しいと言って
隣に居て
触れさせて

ほんのちょっとでも
少しでも
救われたくて
一体誰に
それを求めているのだろう

ダメだと思っても
止められなくなる
いろんなものを持ってるはずなのに
なにもかもに届かない
そんな気持ちになって
ただ、ツライ

第2話「ぐるです」

JUGEMテーマ:小説/詩


勇者:「で、どういう話だっけ」
僧侶:「シナリオなんてないでしょ。いっつも」
勇者:「どこまでいい加減なんだ作者」
僧侶:「どこまでも果てしなくいい加減なのよ」
勇者:「だったら俺がなにしてもいいんだな!?」
僧侶:「限度はあるでしょ? 公序良俗に反し……てるわね、思いっきり」
勇者:「あ、さっきの民家当たりだったぜ。金貨だろ、指輪だろ、それから…」
僧侶:「あら、大漁♪」
勇者:「全く、勇者ってのはいい職業だな!」
僧侶:「絶対間違ってるけど、まいいか」
勇者:「尻ぬぐいは全て王様がしてくれるしっ!!」
僧侶:「王様……この盗賊のために、なんという苦労を…きっと早死にするわね」
勇者:「ちなみに大臣はぐるだ」
僧侶:「賄賂!? あんたいつの間に」
勇者:「いや? あいつも権力使って人んち上がり込んでるだけ」
僧侶:「そっちは……捕まえとこうか」
勇者:「えー」
僧侶:「私達以外のやつに盗られていいと思ってるの?」
勇者:「それはいかん!!」

1時間後、半殺しにされた大臣が自首。
勇者と僧侶の縄張り意識に破れる。

鳥の巣

JUGEMテーマ:小説/詩


最近、朝鳥の鳴き声がうるさい。
そう思ってるだけだったが、洗濯物を干していてふと見上げて気づいた。
なんだ、鳥の巣か。
どうやら気づかぬうちに巣作りしていたらしい。
多分、まだ雛は孵ってないのだろう。
正直朝の弱い俺からすればいい迷惑だが、かといってこれをどうにかしてしまうのも忍びない。

ということをダチと飲んでる時に言ったら、
「お前が鳥の巣壊せねぇってガラかよ! ぶははははは」
と笑われた。
全くもって傷ついた。とりあえずその時吸ってたたばこをそいつの腕に押しつけてやった。
同時に足も思いっきり踏んでやった。俺が履いてる靴はただの靴じゃない。ちょっと荒れた道でもモノともしない半登山用の根性の入った奴である。
「ほおおおおおおおおっ!!」
全く、うるさいやつだ。
「おま……骨……折れる…」
「知らん」
さて、どうしたものか


毎朝うるさいが、心優しい俺は暖かく見守っている。
起きた瞬間はこの野郎唐揚げにしてやろうかと思ったりもするが我慢だ。
卵も茹でたらきっとうまいだろうけど、それも我慢だ。
俺の家のべらんだの軒先で新たな命が生まれようとしているのに、そんな一時のイライラで摘み取ってしまうわけにはいかない。
そうだ、落ち着け俺。
深呼吸だ。
すーはー
……その時、猫が隣のベランダからよじ上がってくるのが見えた。
目線はもちろん、鳥の巣。
「くおおおおおおおらあああああああああああああああああ!!!!」
思わず馬鹿でかい声が出た。
目んたま飛び出そうなぐらい出た。
深呼吸なんぞしちまったのがいけなかったらしい。
びくっどころが、銃声でも聞いたかのように、めちゃくちゃ慌てて逃げていく猫。
ふふーん。ざまぁみろ
この俺の領地を脅かそうとするからだ。
と、足下にぽとっと音がした。
鳥の糞? いや……
音に当てられて、バランスを崩した親鳥だった。


そんなトラブルもあったものの、鳥はやはり今日も卵を温めているようだ。
雨が降ってきたので、ちょっと様子を見に行く。
……実はこいつが来てからベランダでたばこも吸ってない。
確かに俺にしては変に愛着がわいてるような気がする。
悪いか。いいだろ、別に。なにも変じゃないぞ。
誰も聞いてないのに言い訳してしまう俺。
雨の音を聞きながら、鳥の巣を眺めること数分。
ふと、雨の音に紛れて小さな音が聞こえてきた。
こつ、こつ。
俺はびびって後ずさってしまった。
おい、まさか。
こつ、こつ。
孵ろうとしてるのか?
こつ、こつ。
こんな雨の日じゃなくてもいいのに。
思わず唾を飲み込む。
よくわからんが、緊張してきた。
まさかそんな瞬間に立ち会えるとは…。
こつ、こつ。
じっと見つめる。下からじゃ巣の中は見えないけど、きっと今卵は一生懸命孵ろうとしているはずだ。
しばらくして。
雨の音にかすれるように、聞こえた。
ぴ。ぴぃ。
かすかな、雛の鳴き声。
思わず俺は部屋の中に駆けだした。
携帯電話を手に取って、すぐさま電話をかける。

「あー、もしもし。なんだ?」
「雛が生まれたんだよ!!」
「は?」
「だから、この前話してた鳥の巣の」
「あ? なんだっけ?」
「お前いっぺん死んでこい」
切った。

次。
「もしもし?」
「おー久しぶり」
実はさー、鳥の巣が軒先にできて、雛が生まれたんだよー!
という内容を熱弁してみた。
「あーそうなんだ。おめでと」
反応薄っ!!


しまった。
感動を共感できる友達が居ない。
なんて惨めな奴なんだ俺は。
なんか居ても立っても居られなくて、ピザ屋に電話した。
「はい。○△ピザです」
「えっと3番のピザ、Mサイズ。超特急で。住所は…」
「はい、わかりました。30分以内にお届けしますので、代金の用意をしてお待ちください」
ち。30分以内じゃない、超特急だよ超特急。
落ち着かないまま貧乏揺すりとかしながら15分待ったところでチャイムが鳴った。
「はい!」
「お待たせいたしました、3番のピザです。代金は……はいちょうどですね。ありがとうございました」
「ちょっと待ったああああ」
「はい?」
「実はですね!! ベランダの軒先に鳥の巣がでたんスよ!! そんでね!」
「あの、すいません。次の配達があるので……」
そういって配達員は逃げた。
使えねぇ。
ダメだ、あそこのピザ屋。もう頼まねぇ。
……まぁ、いいや。ピザ食うか。
久々に食うが、うまいな。やっぱまた頼むか。


数日後。
ぴぃぴぃぴぃぴぃうるさい。
衣つけて揚げてやろうか。若鶏の唐揚げは大好物だぞ、この野郎。
しかし、そんな卑小な自分はダメだ。我慢だ。ああでも、うまいかも知れない。
いやいや、そんなことはいい。
たまに見える雛は、小さくて可愛くておいしそ……いやいや、可愛くて和む。
全く、親鳥よりそそるから困る。
早く育つといいなぁ。巣立ちはいつだろう。


そんなこんなで見守ってたある日。
いつものようにベランダに出て
出ようとしてすぐ窓を閉めた。
落ち着け。
なにがあった俺。
なぜ閉めた。
なぜ戻った。
よし、深呼吸だ。
すーはー
すーはー
よし。
右良し、左良し。
窓開ける。
見る。
羽毛が落ちてた。
赤く汚れた、小さな羽毛が落ちてた。
血で濡れ、もう舞うことのない、小さなものが落ちていた。
俺は窓を閉めた。
目を閉じた。
どうやら俺はショックを受けてるらしい。
なんでだ?
それは……
「嘘、だろ…」
雛は殺されていた。
俺が食ったわけじゃない。何者かに殺されていた。
といっても人間じゃない。
きっと、あの猫だ。


気がつけば外に居た。
なにをどう歩いて来たかわからないが、茂みの中にいた。
そして、視線の先にはその猫が居た。
薄汚れた猫は、前のように逃げ出しもせず、怯えたような目をしつつもこちらを威嚇してた。
お前はなにをした。あの雛になにをした。
俺は一歩踏み出した。
全身の毛を逆立てて、猫が威嚇する。
俺はさらに一歩踏み出した。
猫は後ずさりもせず、怯えてるはずのに、まだ威嚇していた。
もう走ればすぐ捕まえられる距離なのに逃げ出さなかった。
にー
聞こえた。
聞きたくもない鳴き声が聞こえた。
にー、にー
その猫のうしろには、小さな子猫が3匹、隠れていた。
いや、隠れようとしているのだが、必死すぎて隠れられないのだろう。
にー、にー
3匹のうち、1匹は鳴いてなかった。動いてもなかった。
よく見ると、顔は子猫だが、身体がおかしかった。
さらにしばらく見て、それがなにか気づいた。
潰れていたんだ。
俺は、急にいたたまれなくなって、振り向いて、走った。



部屋に戻り、薄暗い室内の電気もつけず、そのまま床に寝転んだ。
なにも思い浮かばない。
真っ白だ。
唐揚げ食いたい。
違う。
猫って焼いたら食えるんだろうか。中国人ならありうるな。
違う。
なんでこんな
自然って残酷なんだろう。
いや、あの潰れた子猫は、自然というより……

……たばこ吸うか。
もう、ベランダで吸っても構わんだろう。
と思って、窓を開けて後悔した。
ああ
そのままだった……な。
埋めてやるか。

ぴ。ぴぃ。
聞こえた鳴き声に俺は全速力で逃げた。部屋の中に逃げて、突っ走って、そのままトイレに逃げ込んだ。
ついでにズボンを降ろしたところで気づく。
なにをやってるんだ俺は。
ベランダに戻る。
窓は当然開けっぱなしで、そこに転がってるのもそのままだった。
だけど、そこから目をそらして巣を見上げた。
ぴ。ぴぃぴぃ。
居る。まだ生きてる。
全部殺したわけじゃなかったのだ。
しまった、たばこを吸えない。
…違った。
喜ぶところだここは。
でも喜ぶ前に、目がうるんで、なんかまた逃げたくなった。
いや、今はやることがある。
埋めてやろう。こいつの兄弟を。


近くの公園に埋めてやった。その場でたばこを1本吸って、吸い殻を墓標代わりに立ててやった。
いつもは一応持ち帰るが、墓標の1つぐらい許されるだろう。
家に帰ったらもう疲れて、そのまま床に転がって寝てしまった。
そして、おいしそうな唐揚げの夢をみた。空飛ぶ唐揚げの。



…どんだけ食い意地張ってるんだ俺は。
起きてから自己嫌悪に一瞬入った。
あ。
慌ててベランダを開けて、見上げた。
暗い。もう夜になってたのか。
音はしない。
でも夜目に慣れてくると、親鳥が居るのがわかった。
なるほど。寝てるのか。
じゃあ寝るか。
さっきまで寝てたが知らん。
こいつが寝てるのに俺が寝てないのはおかしい。
なにせこいつにいつも起こされてるんだ。
俺はもう一度寝た。


今度は、飛び立つ雛の夢を見た。
俺も一緒に飛ぼうとして、崖から落ちた。


目が覚めて苦笑した。
こいつが巣立ちするまで、俺はきっとこんなだろうな、と思って。
外は明け方。コンビニいって、唐揚げでも買ってこよう。

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